「子どもは母乳を飲んで育ちますよね。だから、自分が食べたものがそのまま血液を通して子どもにも伝わるんだよと教えてもらいました。その方に自分の扱っている椎茸を使ってだしをとってみたらと言われました。その時思い出した料理がいつも母が作ってくれていた椎茸・いりこ・昆布のお出汁から作ったお味噌汁でした。驚くことにたったの2日で、娘の発疹がスッと引きました。それは自分の会社が扱っている食品の素晴らしさを感じる体験になったんです。」
これまで料理と無縁だった景子さんにとって、毎日出汁を取る生活は難しいと感じていた。多くの現代人は日々の家事・子育てをこなす上で、料理にかける時間はそう多く取れない。実家の椎茸屋のお客さんと話しているうちに、同じ気持ちのお母さんが多いことも知った。そんな流れで生まれたのが、現在の「陽より子」の定番商品、「豊潤なだし」だった。
「もっと椎茸の素晴らしさを多くの人に伝えたい、手軽に味わってほしいと思うようになりました。」
そうして現在は、実に40種類ほどにまで増えた自社製品。そのほとんどの企画を景子さんが担当する。自身の悩みをもとに考えた商品たちは、同じ悩みを抱えるお母さんたちの強い味方となった。
「2年前からは、めんつゆや白だしといっただしに特化した商品も作り始めました。きちんとだしをとることもいいですが、日々の忙しい中で、お母さんたちがより手軽にしいたけやだしを使って料理をしてほしい、それがまた次の世代へと残ってほしいと思っています。」
手軽さと、おいしさの両立。椎茸を通して食への関心を高めること──。
それが「陽より子」のモットーとなった。